紛争処理センターや裁判所の利用による解決

交通事故オンライン損害賠償編

千葉、都内、埼玉、茨城を中心に全国対応
伊佐行政書士事務所
 

交通事故紛争処理センター

財団法人 交通事故紛争処理センターは、交通事故の関係者の利益の公正な保護を図るため、 交通事故に関する紛争の適正な処理に資する活動を行い、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的としています。

基本的に無料で和解の斡旋などをしてもらえるので、人気があるようです。市の無料相談などを利用しても、 ここの利用を 薦められたという人は多いのではないでしょうか。利用に当たって注意すべきことは、先ず自分でしっかりと 請求額等とその根拠を示す準備をしておくということです。センターは中立の立場ですので、被害者の味方をしてくれるわけではありません。 あまり他力本願で臨みますと不本意な結果しか得られない可能性もあります。

紛争処理センターで納得できない場合

Q 肩の怪我で12級13号に認定されている者です。保険会社とは話し合いがまとまらなかったため、 紛争処理センターに持ち込んで話をしていたのですが、保険屋の依頼した弁護士が ひどい人で(紛センの弁護士もひどいねと言ってました)、話がまとまりません。 紛センの弁護士さんの提示案で話を付けたらといわれましたが、赤本の金額よりかなり低いようで納得できません。 赤本で計算するのではと聞いたのですが、「ベースは赤本だが、事情により増減するのはあたりまえ。センターは中立だから、 きちんと主張してくれないと赤本とおりにはならない」といわれました。 結局審査会で裁定までしていただいたのですが、やはり納得のできる金額ではありませんでした。この後は裁判しかないのでしょうか?

A 紛争処理センターで納得できる解決ができなかったということでしたら、お考えのとおり訴訟提起するしかないように思います。 紛争処理センターの「中立」を被害者の味方と勘違いされている方は多いようです。 もっとも通常は保険会社の提示額が低すぎるため、ある程度はほっておいても増額することから、 被害者の「味方」のごとく受け取られるようですが、原則はやはり「中立」ですので、加害者側も被害者側も自分の主張を 通すための努力をしなければ、望んだような結論にならないのは仕方のないことです。 紛センに申し込めば、紛センの弁護士さんが弁護士基準で解決してくれる、ということになれば、極端な話、弁護士の交通事故の仕事や 裁判所もいらなくなってしまいますね。今の状況で訴訟を提起されても、裁判所はあなたの味方をしてくれる機関ではありませんので、 結論は同じか、逆にもっと悪いものになる可能性が高いのではないでしょうか。 費用の問題もあるのかもしれませんが、今以上の解決を望まれるのであれば、弁護士に相談するしか道はないものと思います。

調停

訴訟は、原告と被告が公開の法廷でそれぞれの主張や証拠を出して、それに基づいて裁判官が判決を出します。

それに対して調停の場合は、申立て人と相手方の話を裁判官と二人以上の調停委員(普段は裁判官は出席していないようです)が聞いて、 お互いに納得して話がまとまるように取り持ってくれます。訴訟に比べて簡単な手続きで柔軟な解決が図れるというメリットもありますが、 相手との意見の隔たりが大きかったり、不誠実な相手の場合は話がまとまらないこともあります。 調停では話がまとまれば調停調書という書類が作られます。それは判決と同じような効力がありますが、 話がまとまらなかった場合は調停不調となります。裁判のように強制的に判決を下す、ということはありません。

調停にはいくつか種類があり、家事調停(離婚や遺産分割など。家庭裁判所で行われます)とか、 民事調停(交通事故、近隣関係、借地借家など。簡易裁判所か地方裁判所で行われます)というように分かれています。

通常は2~3回の期日が開かれるようですが、内容によりまちまちなようです。 統計上では民事調停の8割は3ヶ月以内に審理が終了しています。

少額訴訟

60万円以下の金銭の請求に限り、原則として一回の審理で判決を出してくれます。 通常の裁判では、お金と時間がかかるため、泣き寝入りしてしまうような事件についても、簡易、迅速に裁判が受けられます。 訴状も定型用紙があり、一般の方でも簡単に記入できます。

弁護士などの力を借りずに、簡易裁判所の訴訟手続きができるように配慮されていますが、 ケースによっては通常訴訟に移行することもありますので、充分に検討した上で利用するようにしたほうが良いでしょう。 実際に、過失割合でもめていて少額訴訟を提起したが、通常訴訟にされてしまい困っている、というようなご相談をよくいただきます。 複雑な交通事故事件解決に利用することはあまりお勧めできません。物損事故など、損害額がはっきりしている場合などには利用価値が高いのではないでしょうか。

訴訟

交通事故の訴訟事件は年々増加傾向にあります。平成15年中に終局した交通通常訴訟事件の平均審理期間は、地方裁判所が12.5ヶ月、 簡易裁判所が4.2ヶ月となっています。期間別事件数の割合を見ると、地方裁判所では受理してから1年以内に終局した事件が63.1%、2年以内に 終局した事件が91.1%であり、簡易裁判所では受理してから1年以内に終局した事件が97.3%、2年以内に終局した事件が99.8%と いずれもほとんどの事件が2年以内に終局しています。(交通安全白書より)

調停や紛争処理センターを利用しても解決ができなかった場合は、訴訟を起こすしか道はありません(調停などを経なくても訴訟は起こせます)。 時間的な問題、金銭面、精神面で不安を感じる方が多いと思いますが、必要であれば訴訟に踏み切ることも大切だと思います。 このようなときは、一人思い悩むより、弁護士に相談するのが早道です。