診断の曖昧さ
怪我の程度や経過によって検査方法なども異なってくることもあることから一概にはいえませんが、医師によって異なる見解を示す場合が多くあります。
診断というのはかなり幅があるもののようですので、どちらが正しいとは必ずしも言い切れないようですが、
治りが遅い場合などは医師と良く相談し、場合によってはセカンドオピニオンの受診も検討しましょう。以下は医師によって見方が違ったことの例です。
『最初の医師はMRIを見ながら腱板が断裂しているといい、他の医師は同じMRIを見ながら全くそのようなことはないと診断した。』
『最初の医師はレントゲンを見て、骨折なしと診断したが、同じレントゲンを見て他の医師は、横突起の骨折を指摘した。』
『最初の医師は膝の打撲と診断したが、痛みが長期間続くので他で見てもらったら、膝の靭帯が損傷しているといわれた。』
『最初の医師は頚椎のレントゲンを見て経年性の変化が見られるといったが、他の医師はレントゲンも見ず、症状だけで、経年性の変化ではないといった。』
鞭打ち損傷
人身事故で被害者につけられる傷病名は、数の上では頚椎捻挫(鞭打ち損傷)が圧倒的に多いでしょう。鞭打ち症は昭和40年代にマスコミに大きく取り上げられて以来 、 様々な研究がされてきていますが、症状が多彩であり、原因や治療方法もはっきりと確立されているわけではなく、そういった意味では奇病ともいえるようです。 通常、事故で頚椎捻挫などと診断されると、軽症例では安静のみ、あるいは亜急性期以降の物理療法との組み合わせで短期に軽快する例が多く存在します。 ところが何割かは頑固なしびれや疼痛、頭痛、めまいなどの症状を残し長期化します。物理療法をどの程度の期間行なうべきかについては医師の診断によるところであり 、患者の症状の変遷等により判断されるべきものですので、 一概に期間を区切る事はできません。医師の診断を受けている場合、 初期に単純X線検査を受けるのが普通ですが、長期化する事案の場合は、後でMRI検査をする場合もあります。 MRIで異常が確認された場合でも、 その事が必ずしも爾後の治療にプラスに働くとは限りません。MRIで認められる異常所見は必ずしも患者の症状と一致しないからです。 MRIの読影は医師によって異なる場合も多いです。同じ椎間板膨隆を症状の原因と断じる医師もいれば、症状とは無関係と見る医師もいます。 医療の曖昧さは、交通事故を取り扱う専門家であれば承知していることですが、その事がそういった事に慣れていない患者を不安にさせていることも多くあります。
物理療法が効を奏さない場合は、ケースバイケースのことではありますが、 神経ブロック療法を行なったり、低髄液圧症候群の検査をする場合もあります。 神経ブロックはバレーリュー症候群などの治療に用いられます。自律神経系の異常が疑われる場合は星状神経節ブロックによって改善が見られることが多いです。 医師の考え方や患者の症状の程度にもよるのでしょうが、治療効果があるかどうか判然としないのに、漫然とブロック注射が続けられているようなケースもあります。 ブロック療法でも効果がなく、頭痛や倦怠感等の強い症状に悩まされる場合は、低髄液圧症候群の検査を進められることが多くなってきています。低髄液圧症候群自体は昔から ある病名ですが、最近、鞭打ち損傷後の様々な症状は、この低髄液圧症候群である場合があるという説が話題に上っています。治療は普通、ブラッドパッチが行なわれますが、必ずしも著効を示す わけではないようです。裁判では低髄液圧症候群と交通事故との因果関係が認められた例などが出てきており、マスコミで報じられていますが、認められない例も多く存在しています。
通常鞭打ち損傷と呼ばれる病態で後遺障害がのこる場合は、12級13号か14級9号が認定されるか、あるいは不認定とされるのが通常です。12級13号と 14級9号はいずれも神経症状が残る場合のものですが、医学的に痛みなどの後遺症が残るといわれた場合でも、その事が必ずしもいずれかの等級に認定される保証となるものではありません。 医師の言う後遺症と自賠責の後遺障害等級というものは判断基準が異なるからです。例えば頚椎捻挫と診断され、痛みがとれずに一年後に症状固定とした場合、 医師もこの痛みは残ると考えていたとしても、自賠責の認定は非該当となる場合があります。それは自賠責の後遺障害等級認定は単に痛みが残ったという事実のみではなく、 その痛みの原因が医学的に説明できる事を要求するからです。12級13号についてはどんなに自覚症状が重くとも、その原因が画像などで証明されない限りは先ず認定される事はありません。 従って、仮に低髄液圧症候群等の診断名がついたからといって、必ずしも後遺障害等級認定がされるとは限らないのです。
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