適正な慰謝料金額は人それぞれ
慰謝料は精神的な損害に対する賠償金ですので基準化は容易ではありませんが、現行の基準では主観的な精神的損害に重きをおかず、 法的安定性などの面を重視して客観的な評価にとどめて基準化しています。すなわち、同じ怪我で同じ通院期間、同じ実通院日数であれば、加害者を憎んでいようが、 加害者が誠意を尽くしてくれており、慰謝料などいらないというような内面的な感情を持っていても、保険にさえ入っていれば、同じ金額がある程度自動的に支払われるような仕組みになっています。
「任意保険の慰謝料が低いのかどうか妥当な金額を教えて欲しい」という相談を受けることは頻繁にあります。 慰謝料が低い、という意味にも 色々あるので、いつも回答に窮してしまいます。加害者や保険会社の対応に腹を立てて、費用はいくらかかっても構わないから、1円でも多く慰謝料を払ってもらいたいという人、 費用はかけないで最大限慰謝料を払ってもらいたいという人、特に不満はないが、一般的な慰謝料より低く計算されていては悔しいので、どれくらいが相場なのか教えて欲しいという人、 他にも色々なパターンがあるので、パターン別に説明するわけにもいかず、結局あやふやな回答しかできません。確かに全く低額としかいいようのない金額を提示されている人も 多く、その場合は比較的回答は楽なのですが、後遺症が残らないようなケースでは、比較的妥当な提示を受けている場合も多く、 説明が難しくなります。 金額に対する価値観も人それぞれですので、1万円でも増える可能性があるなら粘り強く交渉する人もいれば、50万も変わらないなら、争いはいやだからこのままでいい、 と考える人もいます。現在は貰えるものは貰っておく、という考えが多いようですが、事故はお互い様だから、慰謝料など特にはいらない(重傷でないケースで、相手と金額次第でしょうが)という考えをする人も、 大勢残っていると思います。実際の依頼者様も、そこそこ相場程度の支払いが受けられればそれでいいという方は多くいらっしゃいます。
専門家に依頼してくる人は、既に相手方の不誠実さや強引な治療打ち切り要請などの対応に嫌気がさし、強い不信感を抱いていらっしゃいます。 あるいは後遺障害が残って今後の不自由な生活を受け入れざるを得ないような状況となっている人が多いです。 専門家はそういった依頼人の権利を守る為に仕事をします。依頼人が受け取る権利のある慰謝料等が最大値になるように、方法を考えたり資料を作ったりします。 ですが、それだけではありません。
過去に専門家に依頼して大幅な慰謝料増額をしたことのある人が、知人が事故にあって、保険会社の提示した慰謝料金額で示談したという話を聞いて、 その知人にさもお気の毒にという感じで言ったそうです。「保険会社の提示とおりで示談したなんて、損しましたね。専門家に頼めばもっと慰謝料がもらえたはずなのに。」 確かにそうであったかもしれませんが、その人がその金額で良いと思えばそれで良いことなので、他人が横から慰謝料の金額について煽り立てる必要はないと思います。 個人の価値観は皆異なり、誰もが賠償金をより多く得ることが利益の全てと考えているわけではないのですから。慰謝料の最大値を教えるのも専門家の大切な仕事ではありますが、 必ずしも最大値を得ることのみがその人の最大の利益を実現する事になるとは限らないのです。裁判をすれば最大限の金額を得られる可能性が高いような事案でも、 裁判を望む人もいれば望まない人もいるのです。
このような書き方をすると、最大限の慰謝料を求めていくことは好ましくないことなのかと思われるかもしれませんが、決してそういう事が言いたいのではありません。 金銭賠償が原則となっている以上、失われた時間や将来にわたる苦痛を慰謝するには、やはり金額で示してもらうしかないのです。 特に介護を要するような重篤な後遺障害などが残った場合は、生半可な知識で安易な示談をすると取り返しがつかないことにもなりかねません。 「慰謝料目当て」などという言葉がありますが、これは不当な方法で慰謝料を増額せしめようとする事を指すのであって、法的に妥当と考えられる範囲内で最高限度の権利を主張することは、 何ら恥らうべき事ではありません。堂々と請求すべきだと思います。 大切なのは、無責任な周りの意見に流されず、どのような解決方法をとるのかは、自分で決めるという事です。 判断の基礎となる客観的な情報を被害者に提供し、その人の主観を考慮した最善の解決方法を考えさせる。 そして無用な紛争を事前に予防する。その様なサポートも専門家の大切な役割だと思います。
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