慰謝料の計算方法

交通事故オンライン損害賠償編

千葉、都内、埼玉、茨城を中心に全国対応
伊佐行政書士事務所
  1. ひと目でわかる ~慰謝料の基準別早見表
  2. すこし詳しく ~むち打ち症の慰謝料計算例
  3. 難しい計算が誰でもできる ~慰謝料計算シート
  4. 実務に役立つ ~慰謝料増額の知識
  5. 後遺障害慰謝料の計算
  6. 死亡慰謝料の計算
  7. 慰謝料表の解説ページへ
  8. 実務の認定金額2263例のページへ

ひと目でわかる ~慰謝料の基準別早見表

かんたん! 通院慰謝料早見表
通院期間 頸椎捻挫などの軽傷用 骨折などの重傷用
任意保険基準 弁護士基準 任意保険基準 弁護士基準
※ 使用例:むち打ちで6ヶ月通院した場合、任意基準で64万円、弁護士基準で89万円です。
3ヶ月 38万円 53万円 49万円 73万円
4ヶ月 48万円 67万円 62万円 90万円
5ヶ月 57万円 79万円 73万円 105万円
6ヶ月 64万円 89万円 83万円 116万円
7ヶ月 71万円 97万円 91万円 124万円
8ヶ月 77万円 103万円 100万円 132万円
9ヶ月 82万円 109万円 106万円 139万円
10ヶ月 87万円 113万円 113万円 145万円
11ヶ月 91万円 117万円 118万円 150万円
12ヶ月 93万円 119万円 121万円 154万円
※通院期間とは・・・事故日から治癒した日(または症状固定日)までの期間をいいます。但し入院した期間を除きます。
 

半月または1ヶ月入院後、通院した場合の慰謝料基準別早見表

入院後に通院した場合
入通院期間
(ヶ月)
骨折など重傷用 入通院期間
(ヶ月)
骨折など重傷用
任意保険基準 弁護士基準 任意保険基準 弁護士基準
※ この数値は大体の慰謝料金額を把握していただくために例示したものです。
入院0.5
通院3
63.8万円 94万円 入院1
通院3
78.5万円 115万円
入院0.5
通院4
76.2万円 110万円 入院1
通院4
90.2万円 130万円
入院0.5
通院5
86.8万円 123万円 入院1
通院5
99.8万円 141万円
入院0.5
通院6
95.8万円 132.5万円 入院1
通院6
108.1万円 149万円
入院0.5
通院7
104万円 140.5万円 入院1
通院7
116.2万円 157万円
入院0.5
通院8
111.4万円 148万円 入院1
通院8
123万円 164万円
入院0.5
通院9
118万円 154.5万円 入院1
通院9
129.5万円 170万円
入院0.5
通院10
123.7万円 160万円 入院1
通院10
134.4万円 175万円
入院0.5
通院11
127.9万円 164.5万円 入院1
通院11
137.7万円 179万円
入院0.5
通院12
131.1万円 168.5万円 入院1
通院12
140.9万円 183万円
  

すこし詳しく ~むちうち症の慰謝料計算例

1.基準表による計算

  • 慰謝料計算の準備
  • (1)使用する慰謝料表の選択・・・関東では赤い本、それ以外の地方では青本の慰謝料表が用いられるのが一般的です。
  • (2)重症度の判断・・・打撲や捻挫、挫創程度の怪我を軽傷、複雑骨折や脊髄損傷などは重傷、単純骨折や靭帯断裂などは通常の傷害とします。 むち打ち症は捻挫ですので、一般的には症状が重くても軽症となります。
  • (3)治療期間(入院期間と通院期間)の特定・・・通院した回数ではなく、入通院した期間の日数を数えます。

下の慰謝料表をご覧ください。 ここでは関東地方でよくつかわれている赤い本の慰謝料表を使用します。別表Ⅰと別表Ⅱがありますが、捻挫や打撲などの軽傷の場合は、こちらの別表Ⅱを使います。 怪我が軽い分、精神的苦痛も少ないと考えられるため、金額が低く設定されています。 骨折など通常以上の怪我は、別表Ⅰを使ってください。

入院および通院期間それぞれに該当する月数が交差するところの数字が慰謝料の金額となります。

赤い本 別表Ⅱ
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183

むち打ち症で入院する人はあまりいませんので、計算はとても簡単です。通院した期間の横にある数字が慰謝料の金額になるのです。例えば 6ヶ月通院した人は89万円です。12ヶ月通院した人は119万円という具合です。ただこれだけです。 1ヶ月入院してから6カ月通院した場合は、113万円ということになります。 細かい端数の計算方法は、慰謝料計算シートにわかりやすく説明してあります。

2.実務の認定金額

実務では慰謝料表の金額とおりに認定される場合もあれば、事情により金額が増減される場合もあります。 ここでは実際の認定例を、通院期間ごとに整理してご紹介します。意外とバラバラなのがお分かりいただけると思います。

実務の慰謝料認定金額(裁判例および紛争処理センター裁定例より)
例1 例2 例3 例4 例5 例6 例7 例8 例9
通院4ヶ月 ±10日 45万円 67万円 75万円 75万円 70万円 70万円 84万円 80万円 65万円
通院5ヶ月 ±10日 60万円 70万円 80万円 50万円 67万円 65万円 90万円 90万円 80万円
通院6ヶ月 ±10日 80万円 80万円 100万円 100万円 90万円 80万円 77万円 85万円 90万円
通院7ヶ月 ±10日 84万円 90万円 100万円 90万円 100万円 86万円 90万円 90万円 87万円
通院8ヶ月 ±10日 120万円 110万円 95万円 90万円 120万円 60万円 100万円 95万円 90万円
通院9ヶ月 ±10日 95万円 80万円 100万円 120万円 100万円 106万円 70万円 96万円 100万円
通院10ヶ月 ±10日 100万円 125万円 112万円 90万円 100万円 111万円 101万円 100万円 110万円
通院11ヶ月 ±10日 160万円 120万円 120万円 110万円 60万円 120万円 98万円 103万円 110万円
通院12ヶ月 ±10日 110万円 135万円 90万円 125万円 106万円 110万円 100万円 100万円 120万円
   

難しい計算が誰でもできる、慰謝料計算シート

「交通事故で入通院した慰謝料はいくらになるの? 実際の計算手順がわからない。計算根拠が説明できない。」 そんな方のために作りました。 自動計算機では理解できない計算過程もわかるため、説得力があります。 印刷してお使いください。

※入通院慰謝料を計算するためのシートです。後遺障害・死亡に関する慰謝料は該当ページをご覧ください。

ダウンロードにはアドビリーダーが必要です。

慰謝料計算シートの使用例

計算事例(1) ~ 頚椎捻挫。通院期間190日間、実通院日数115日の場合
(1)通院期間を30で除して月数に換算します。190日であれば190÷30=6.33ヶ月となります。
(2)入通院慰謝料表を見て、通院期間に対応する月数の慰謝料金額を求めます。 赤い本の別表Ⅱの場合は6ヶ月=89万円が対応する数字となります。
(3)月に満たない日数分を別に計算します。通院期間が6.33ヶ月だったとすると、 6ヶ月と7ヶ月の慰謝料の金額の差に0.33を乗じて求めます。 赤い本の別表第Ⅱの場合は(97万-89万)×0.33=2万6666円となります。
(4)入院期間がある場合はここで計算を行いますが、本例では入院していないため、0を書きこみます。
(5)月に対応する金額と、月に満たない日数分を加算したのが通院慰謝料の金額となります。89万円+2万6666円=91万6666円。
慰謝料表別表Ⅱ
計算事例(2) ~ 腰椎捻挫。通院期間360日間、実通院日数40日の場合
(1)実通院日数が少ない場合は、実際の通院期間ではなく、修正した通院期間をもとに計算する場合があります。 修正通院期間は実通院日数×3.5(他覚的所見のないむち打ちなどの場合は×3)で計算します。 目安としては週に2日未満の通院の場合に修正通院期間を用いるケースがありますが、実通院日数が少ないからといって、一律に修正通院期間を用いた計算方法が 採用されるわけではありません。
(2)実通院日数を3倍して修正通院期間を求めます。40日×3=120日間。
(3)修正通院期間を30で除して月数に換算します。120日間は4ヶ月となります。
(4)入通院慰謝料表を見て、通院期間に対応する月数の慰謝料金額を求めます。赤い本の別表Ⅱの場合は4ヶ月=67万円が対応する数字となります。
(5)月に満たない日数分がある場合は、別に計算します。この例では端数ありませんので、67万円が事例の慰謝料額となります。
計算事例(3) ~ 全身打撲。入院期間75日間、通院期間240日間、総治療期間315日間の場合
(1)治療期間を30で除して月数に換算します。315日であれば10.5ヶ月ということになります。 治療期間とは入通院を合算した治療期間のことです。2.5ヶ月入院した後に8ヶ月通院した場合は、10.5ヶ月間となります。
(2)入通院慰謝料表を見て、治療期間に対応する月数の慰謝料金額を求めます。 赤い本の別表Ⅱの場合は113万円が対応する数字となります。
(3)治療期間に月に満たない日数があれば、別に計算します。治療期間が10.5ヶ月だったとすると、 10ヶ月と11ヶ月の慰謝料の 金額の差に0.5を乗じて求めます。赤い本の別表第Ⅱの場合は (117万-113万)×0.5=2万円となります。
(4)次に入通院慰謝料表を見て、入院期間に対応する月数の入院慰謝料金額を求めます。2ヶ月の入院だと、 赤い本の別表Ⅱの場合は66万円が対応する数字となります。
(5)入院期間に月に満たない日数があれば、別に計算します。入院期間が2.5ヶ月だったとすると、 2ヶ月と3ヶ月の入院慰謝料の 金額の差に0.5を乗じて求めます。赤い本の別表第Ⅱの場合は( 92万-66万)×0.5=13万円となります。
(6)次に入通院慰謝料表を見て、入院期間に対応する月数の通院慰謝料金額を求めます。2ヶ月の入院だと、 赤い本の別表Ⅱの場合は36万円が対応する数字となります。
(7)入院期間に対応するの月に満たない日数分の通院慰謝料を計算します。入院期間が2.5ヶ月だったとすると、2ヶ月と3ヶ月の通院慰謝料の 金額の差に0.5を乗じて求めます。赤い本の別表第Ⅱの場合は(53万-36万)×0.5=8.5万円となります。
(8)治療期間の慰謝料(例10.5ヶ月=115万円)+入院期間の慰謝料 (例2.5ヶ月=79万円)-入院期間に対応する通院慰謝料(例2.5ヶ月=44.5万円)=入通院慰謝料(例149.5万円)となります。
慰謝料表別表Ⅱ
計算事例(4) ~ 外傷性頚部症候群。通院期間20ヶ月、実通院日数250日の場合
(1)慰謝料表は15ヶ月までしか記載されていません。15ヶ月を超える期間入通院した場合は、1ヶ月毎に15ヶ月と14ヶ月の慰謝料の差額を加算します。 15ヶ月(122万円)-14ヶ月(121万円)=1万円 となります。
(2)15ヶ月分の慰謝料は122万円です。
(3)16ヶ月目から20ヶ月目までの5ヶ月間の慰謝料は5×1万円=5万円です。
(4)20ヶ月分の慰謝料は、122万円+5万円=127万円となります。
自賠責保険の入通院慰謝料計算手順
(1)治療期間の起算日を確定します。初診日が必ず起算日となるわけではありません。初診日が事故発生日から7日以内の時は事故発生日が 起算日となり、初診日が事故発生日から8日以降の時は初診日から7日前の日が起算日となります。
(2)治療期間の最終日を確定します。治療最終日の転帰が「治癒」の場合は治療最終日が最終日となり、「中止」「継続」「転医」 の場合は治療最終日に7日を加算した日が最終日です。起算日から最終日までが治療期間となります。
(3)実治療日数を確定します。入院した日数、通院した日数、ギプス装着日数(入院日、通院日の重複分は除く)の合計が実治療日数です。
(4)慰謝料の対象となる日数を求めます。実治療日数の2倍が対象日数となりますが、上限が治療期間の日数までとなっています。 つまり実治療日数の2倍が治療期間の日数を超える場合は、治療期間の日数までで打ち切りとなります。
(5)対象日数に4200円を乗じた金額が、自賠責保険の慰謝料金額です。ただし傷害についての自賠責保険限度額は120万円ですので、 治療費や交通費、休業損害、慰謝料などの合計が120万円を超える場合は、120万円で打ち切りとなります。

慰謝料計算シート ご利用上の注意

修正通院期間や、特に重症の場合の注意点など。

(1)計算シートは、弁護士基準の慰謝料表や自賠責保険傷害慰謝料の計算が簡単にできるように工夫したものですが、計算結果がどのようなケースにおいても 妥当な慰謝料金額となるということではありません。あくまでも目安としてお考えください。

(2)実通院日数が週に2日未満の場合は、軽傷用の場合は3倍、通常用の場合は3.5倍した値を治療期間とする場合があります。 これを修正通院期間といいますが、傷病の種類や程度などから修正を行わない場合もあります。例えば大腿骨幹部骨折などの治療は、経過観察で月に1~2回の 通院という事も多いですが、一般的な症状経過をたどっている場合は、修正通院期間に直す計算方法を取らないことが多いです。

(3)特に重症の場合は、慰謝料の金額を1.2~1.3倍する場合があります。 絶対安静の期間が長いなど生命が危ぶまれた場合や、大手術を繰り返した場合などが該当します。

(4)1ヶ月を30日として計算します。 通院した期間が1月1日から翌年の12月31日まででしたら、通院期間は365日(うるう年の場合は366日)となり ますので、表に当てはめる時は12ヶ月と5日(6日)で計算します。ちょうど1年だからといって12ヶ月では計算しません。

(5)弁護士基準は赤い本(東京三弁護士会基準)と青本(日弁連基準)が有名ですが、他にも黄色い本(名古屋基準)、緑の本(大阪基準)といったものが 存在しています。

実務に役立つ ~慰謝料増額の知識

慰謝料はいつ計算するか

傷害慰謝料は、怪我の程度と入通院期間によって基準が決まっています。 事故直後に全治10日と診断された場合でも、実際はそれ以上の期間通院することが多いので、最初の診断書に書かれた10日間で慰謝料を計算するのではなく、あくまでも治療が終わった時点で、実際の入通院期間(事故から症状固定日または治癒日まで)を基に計算します。

慰謝料は弁護士基準で計算しよう

「三つの慰謝料基準」のことは置いておき、先ずは弁護士基準のことだけ理解しましょう。大雑把ないい方をすれば、 「妥当な金額(相場)」=「弁護士基準の8~10割程度」と見ることができるからです。

三つの基準とは・・・自賠責、任意保険、弁護士会でそれぞれ独自に定めた算定基準の事です。 それぞれに特徴があり、慰謝料の金額も異なります。 交通事故の損害賠償請求について深く勉強する場合はそれぞれの理解も大切ですが、被害者が苦労して理解する必要はありません。
※ここでは相場として8~10割としましたが、10割以上の請求も可能です。ただし示談による解決では難しいでしょう。

慰謝料増額の方法は?

慰謝料の金額を少しでも弁護士基準に近づけるには、ポイントを押さえたやり方をすることが必要です。 精神的損害の大きさを客観的に説明することは困難ですが、慰謝料の計算において、その説明が不要という事ではありません。 どれだけの精神的苦痛を受けたのか明らかにすることは、最も基本的なポイントといえるでしょう。

先ずは苦痛を可視化することを考えましょう。苦痛には痛み・不便・悲しみ・喪失など様々なものがありますが、 それらを具体的に書き出してみてください。 痛みのために仕事ができなかったのであれば「できなかったこと」「周りに迷惑をかけたこと」 「いつまで続いたか」などの事実を整理することにより、 交渉の相手方に苦痛の大きさを伝えることができます。そしてそれが慰謝料算定の基礎となります。

詳しくは、「慰謝料請求のポイント」のページを参照してください。

特殊な事情がある場合

 

慰謝料の計算は1円単位で正確に出さないといけない?

裁判などでも実際に請求される金額はまちまちです。基準通りに計算した金額を そのまま請求する人もいますし、数字を丸めて(例えば98万5千円を100万円とするなど)請求する人もいます。計算内容を示さなければいけないという決まりもありませんので、そんなに神経質になる必要はないでしょう。計算式を記載して請求すれば説得力がありますが、自信がない場合は、「赤い本の基準を参考に100万円を請求する」というように数字を丸めて堂々と請求してもよいのです。

通院が少ない場合の修正

通常は「実通院日数」とは無関係に「治療期間」で慰謝料を計算しますが、治療期間と比べて、実際に通院した日数が極端に少ない場合は修正を行う場合があります。 週に2日未満の通院しかない場合が修正を行う目安です。実通院日数を3倍した数字を治療期間とみなして計算します。詳しくは後述の「慰謝料計算シートの使用例 事例2」をご覧ください。

斟酌事由がある場合

事故のために被害者が退職や廃業、留年や昇進遅れ、離婚を余儀なくされた場合や、加害者が飲酒運転など悪質性が高い場合は、慰謝料が増額される場合があります。

詳しくは、「斟酌事由」のページを参照してください。

入院が二回以上にわかれている場合

事故後、骨折部分をボルトで固定するために入院し、骨癒合後に抜釘のために再度入院するケースがあります。入院を1ヶ月連続してする場合と、20日間と10日間に分けてする場合とでは、慰謝料の計算に差を設けるべきでしょうか。一般的には特に差は設けず、20日+10日で入院1ヶ月として 計算されているようです。被害者としては入退院の準備などに余計な手間はかかりますが、一連の治療期間における入院である以上は、第二の入院であることを理由に 逓減率をリセットして入院期間別に計算する方法は適切とはいえないと思われます。

満床のため入院待機状態だった場合

入院が必要な状態であるのに医療機関の都合で自宅待機となり、後日入院となった場合、待機期間は入院期間とすべきでしょうか、それとも通院期間と すべきでしょうか。入院と通院の慰謝料で差が設けられているのは、肉体的苦痛の程度や、病院に拘束されることによる行動の制限、プライバシーの低下 などに差があることに由来すると考えられます。満床でやむなく自宅待機をしている期間については、自宅にいても入院時と変わらない肉体的苦痛や 行動の制限を受けているものと推測できますし、むしろ緊急時の対応ができないことへの不安など、精神的苦痛は大きくなるケースも考えられることから、 入院期間として計算すべきと思われます。ただし入院が主に本人や家族の希望によるものである場合は、通院期間として計算すべき場合もあるでしょう。

被害者の事情により入院期間を短くしたと認められる場合

育児・介護・仕事等のやむを得ない事情のために入院期間を短くしたと認められる場合は、慰謝料表により計算した金額を増額することがあります。 傷病の程度から一般的に必要とされる期間から極端に短い入院期間であること、やむを得ない事情があること、 早期退院により苦痛を蒙ったことなどの条件が揃った場合に限られると思われます。

ギプス装着期間

ギプス装着期間は入院期間として算入する場合があります。長管骨や脊柱にギプスを装着し、自宅安静を要する場合などは入院期間とする傾向にあります。 頸椎カラー、クラビクル(鎖骨)バンド、バストバンドなどの装着は、入院期間として参入されることはありません。

毎日通院していた場合

中には半年もの間、週に6日通院していたというケースもあります。症状が強ければ通院頻度が高くなるという考え方もできますが、 症状が強いからといって医学的に毎日治療の必要性があるとまでは必ずしもいえません。合理的な理由があって医師の指示のもと毎日の通院を余儀なくされ、 そのために入院に匹敵するような不便や負担を強いられたなどの場合は、慰謝料の増額事由として考慮する余地もあると思われますが、 むち打ち症などによる症状で、主に被害者の希望により毎日通院をしていたに過ぎない場合は、通常の慰謝料の計算方法が取られるだけで、増額事由とは ならないと考えてよいでしょう。

複数の科にかかっていた場合

捻挫や骨折で整形外科にかかるのと並行して、形成外科、歯科、脳神経外科などでも治療を行う場合があります。別々の日に通院する場合もあれば、 同じ日に複数の科で治療を受ける場合もあるでしょう。通院に奪われる時間や症状により受ける苦痛は、一つの科にかかっているだけの場合よりも多くなりますが、 慰謝料表を用いた計算は、一つの科にかかっている場合と同様に計算します。その上で症状経過や治療内容を考慮し、特に苦痛が大きかったと認められる場合は 基準より高い慰謝料が認められる場合もあります。

事情があって通院を中断していた場合

様々な事情により通院を中断せざるを得ない場合がありますが、やむを得ない事情の場合は慰謝料の計算上、中断期間について不利に扱わない場合もあります。

仕事が忙しくて通院が中断した場合は、やむを得ない事情と認められる可能性は低いです。出張が続いたなどの事情があれば考慮される可能性もありますが、 基本的には「通院の必要がなかった」とみられることになるでしょう。妊娠・出産や海外旅行などのために中断した場合は、 やむを得ない事情として考慮される可能性が高いですが、中断前後の通院状況や、中断した期間の長さによっても判断は異なるものと思われます。

治療器等による自宅療養の場合

むち打ち症などで低周波治療器等による自宅治療が行われる場合があります。 こうした行為は基本的には医師の治療とは別の、補助的な健康維持行為として捉えるべきです。 そのため慰謝料の計算において治療日数として認められる可能性は低くなります。 ただし医師の指示により行っていたなどの事情がある場合は、斟酌される場合もあるでしょう。 水中ウォーキングなどのリハビリも同様に考えます。

海外で通院していた場合

日本の医療と同様に、西洋医学による治療を受けていた場合は、日本における治療と同じように考えればいいでしょう。 民間療法については、日本で一般に認知されている治療法とはいえないため、治療日数としてはカウントされない可能性が高いでしょう。

続けて事故に遭った場合

例えば1月に追突事故に遭い、その治療中、5月にまた追突事故に遭い同じ部位を怪我して通院が長引いたというときは、慰謝料はどのように計算されるべきでしょうか。 第一事故と第二事故の慰謝料を別々に計算する方法と、第一事故と第二事故を通して計算する方法が考えられます。異なる部位を怪我した場合は、別々に計算する方が 妥当というケースが多いでしょうが、全く同じ部位を怪我した場合は、両方の事故を一つのものとして計算したほうが妥当というケースも出てくると思います。 これは一概に決められることではなく、第一事故による怪我の回復の程度と第二事故による増悪の程度などを総合考慮し決めることになるでしょう。

 

後遺障害慰謝料の計算

後遺障害慰謝料は、表に記載されている等級に該当する金額を見るだけです。 14級の人は110万円、12級の人は290万円という具合です。

赤い本 後遺障害慰謝料
第1級 2,800万円
第2級 2,370万円
第3級 1,990万円
第4級 1,670万円
第5級 1,400万円
第6級 1,180万円
第7級 1,000万円
第8級 830万円
第9級 690万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第13級 180万円
第14級 110万円

目標金額は、こうして出した金額の8~10割ということになります。 実務では基準を参考に、障害内容が生活や職業に与える影響、年齢、性別等を考慮して金額が決められています。

後遺障害等級は、認定手続きを経て認定されるものです。症状固定となっても後遺症が残っている方は、認定の手続きを行ってください。

詳しくはこちら→ 後遺障害慰謝料

特殊な事情がある場合

逸失利益が認められない場合

外貌醜状や歯牙欠損、難聴などの後遺症は、労働能力に影響を及ぼさないという理由から逸失利益を否定される場合があります。 このような場合でも、将来何らかの不利益を被る可能性が否定出来なければ、慰謝料を増額して埋め合わせがされる判例が多くあります。 その金額は事案ごとに検討されるため一様ではありませんが、例えば同じ12級の醜状障害でも、10万円程度の加算しかないケースもあれば、 数百万円加算されるケースもあります。

後遺症はあるが、等級は非該当の場合

自賠責保険の後遺障害等級表に該当する後遺障害とはいえない場合でも、それに近い状態であるとか、複数の後遺症が残存している等の理由で、 後遺障害慰謝料として数十万円が認定された判例もあります。

14級の後遺障害が複数認定された場合

例えば頸部神経症状と腰部神経症状がそれぞれ14級に認定された場合、後遺障害等級は併合しても14級のままで、等級が繰り上がることはありません。 しかし14級が一つの人より苦痛の程度は大きいことが考えられます。14級が3つ以上認定されている事案をいくつか調べてみたところ、 慰謝料が増額されているものが複数確認できました。14級後遺障害が3つ以上ある場合は、慰謝料の斟酌自由となり得るものと考えられます。

  • ▼ 事例・判例
  • □ 頚椎捻挫後に頚部神経症状で第14級に認定され、後遺障害慰謝料が110万円認められた判例。
  • □ 腰椎捻挫後に腰部神経症状で第14級に認定され、後遺障害慰謝料が100万円認められた判例。
  • □ 腱板損傷後の肩関節部神経症状で第12級に認定され、後遺障害慰謝料が290万円認められた判例。

その他の後遺障害慰謝料基準

等 級青本 任意保険自賠責保険
別表第1
自賠責保険
別表第2
第1級 2,700~3,100万円1,900万円1,600万円1,100万円
第2級 2,300~2,700万円1,500万円1,163万円958万円
第3級 1,800~2,200万円1,250万円829万円
第4級 1,500~1,800万円950万円712万円
第5級 1,300~1,500万円750万円599万円
第6級 1,100~1,300万円600万円498万円
第7級 900~1,100万円500万円409万円
第8級 750~870万円400万円324万円
第9級 600~700万円300万円245万円
第10級 480~570万円200万円187万円
第11級 360~430万円150万円135万円
第12級 250~300万円100万円93万円
第13級 160~190万円60万円57万円
第14級 90~120万円40万円32万円
※自賠責の別表1とは、介護を要する精神・神経障害や、胸腹部臓器の障害のことです。詳しくは後遺障害別等級表をご覧ください。
※赤い本は関東圏でよく使われている弁護士基準です。青本は関東以外の地方でよく使われる弁護士基準です。 任意保険の基準は保険会社が独自に定めて利用しているものです。自賠責保険の基準は被害者保護のための最低保障額ともいわれていますが、過失の多い被害者は減額される場合もあります。
 

死亡慰謝料の計算

死亡慰謝料は、被害者の家庭における地位によって金額が分けられていますので、表の該当する金額を参照します。

一家の支柱とは父親や夫であることが多いでしょうが、経済的な支柱となっていれば、 母親や長男長女という事もあるでしょう。配偶者とは、ここでは子のない妻や、支柱でない夫などを指すと考えられます。 その他とは、独身の男女、子供、高齢者などを指します。

実務では基準を参考に、加害者の悪質性等を考慮して金額が決められています。 例えば加害者に過労運転、救護義務違反があったり、凄惨な事故だった場合は基準以上の金額が認められやすいといえましょう。

赤い本 死亡慰謝料表
一家の支柱 2,800万円
母親・配偶者 2,500万円
その他 2,000~2,500万円

一家の支柱と母親・配偶者の基準は、赤い本では金額の幅が設けられていませんが、 これは基準額はあくまでも一つの目安に過ぎないという考え方に基づくものです。 基準額に幅を設けることは、逆にその幅の中に金額を収めなければならないという誤解を生むことになるからです。 実務では、個別事情により、基準額にとらわれない金額の認定が行われています。

赤い本のこうした考え方に対して、青本では基準額に一定の幅が設定されています。 そして原則としてその幅の中で金額が決定されています。

詳しくはこちら→ 死亡慰謝料

  • ▼ 事例・判例
  • □ 43歳男性一家の支柱の死亡慰謝料が3000万円認められた判例。
  • □ 51歳主婦の死亡慰謝料が2400万円認められた判例。
  • □ 21歳独身男性の死亡慰謝料が2000万円認められた判例。

その他の死亡慰謝料基準

青本の基準

青い本 死亡慰謝料
一家の支柱の場合 2,700~3,100万円
一家の支柱に準ずる場合 2,400~2,700万円
その他の場合 2,000~2,500万円

任意保険の基準

任意保険 死亡慰謝料
一家の支柱 2,000万円
18歳未満の無職者 1,500万円
高齢者 1,450万円
その他 1,600万円

自賠責保険の基準

遺族分の請求権者は、被害者の父母(養父母含む)、配偶者及び子(養子、認知した子及び胎児含む)とします。

自賠責保険 死亡慰謝料
死亡した本人分 350万円
請求権者1人の場合 本人分に550万円を加算
請求権者2人の場合 本人分に650万円を加算
請求権者3人以上の場合 本人分に750万円を加算
本人に被扶養者がいた場合 200万円を加算
 
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