実況見分と工学鑑定

交通事故オンライン損害賠償編

千葉、都内、埼玉、茨城を中心に全国対応
伊佐行政書士事務所

実況見分について

事故がおきると警察官は事故現場や車両の写真撮影をしたり、当事者や目撃者から供述を取って事故の状況をまとめます。 当事者の氏名、住所、本籍、車種、車両の登録ナンバー、保険会社、保険証券番号などを記録したり、衝突地点、 事故の態様、相手に気がついたのはどの地点だったかなどという事を細かく記録していきます。

当事者は、このような警察官の姿を見て頼りにしてしまい、今後の過失割合や損害賠償の事を質問 したりしてしまうのですが、 そういった民事事件に関することは警察では判断とかアドバイスはしてくれませんので、誤解しないようにして下さい。 警察は実況見分調書を作るだけで、その後の判断、交渉は全て当事者同士でしなければなりません。 そもそも実況見分調書は刑事処分の為に作るもので、民事損害賠償の為の書類ではないのです。

実況見分調書は必ずしも交通事故の保険請求をするに当たって必要になる書類ということではないのですが、 後で過失割合などで争いが起きる場合には、重要になってくることもありますので、調書作成の際には、正確に事故の状況を説明するようにしてください。

実況見分調書の入手方法

実況見分調書の閲覧は、通常、警察ではできません。警察で書類が出来上がると、検察庁へ送ってしまうからです。 ですから検察庁まで出かけていく必要があります。

先ずは実況見分を担当した警察に行って、送致先の検察庁と事件番号などを教えてもらいます。 次に検察庁に行って閲覧・謄写申請をします。検察庁では対応が色々と違いますので、 事前に実況見分調書の閲覧をしたいのですがと問い合わせてから行った方がいいと思います。

交通事故鑑定

交通事故で行われる鑑定には、工学鑑定や医学鑑定などがあります。工学鑑定では、事故現場に残された様々な痕跡から 車両の速度などを把握し、事故原因を推定することができます。ただし鑑定で得られた結果は絶対的なものではなく、 裁判でも採用されたりされなかったりと様々です。

ここでは鑑定で使われる、基本的な算式をふたつだけご紹介します。

スリップ痕から制動前の速度を求める

v=制動開始時の速度(m/s)
u=路面・タイヤ間の摩擦係数
g=重力加速度(9.8)
s=スリップ痕の長さ(m)

摩擦係数は普通乗用車でアスファルト舗装の場合、乾燥時は0.7~0.8、湿潤時で0.4~0.5です。

制動前の速度から停止距離を求める

S=停止距離(m)
T=空走時間(sec)
V=制動前の速度(m/s)
u=制動時の摩擦係数
g=重力加速度(9.8)

空走時間は0.8~1秒くらいで計算します。

スリップマーク

自転車で道路を横断中に車にはねられました。相手はかなりスピードを出していたはずですが、 制限速度を守っていたと言い張っています。相手の保険会社は 本人が守っていたといっている以上、それを前提とした対応をせざるを得ないと、らちがあきません。 現場にはスリップ痕が残っているのですが、これから相手の速度を出すことはできるのでしょうか。

スリップ痕から相手の速度を推定することは可能ですが、それが必ずしも絶対的な証拠になるというわけではありません。 スリップ痕だけでなく、自転車の転倒位置など、他の証明可能な事実にも着目すべきです。