鞭打ち症について
むち打ち症は交通事故の外傷としてはポピュラーなものですが、解決が困難なケースも散見されます。その病態について理解しておくことは 法律家にも必要なことです。
ケベック報告
外傷性頚部症候群(WAD)診療のひとつのガイドラインとしてカナダのケベックむち打ち症関連障害特別調査団の報告書が1995年に出版されました。WADの重症度により、 1 他覚的所見のない頚部周囲の全体的で非特異的な訴え、2 筋や骨格組織の所見を伴う頚部の訴え、3 神経所見を伴う頚部の訴えと分類し、それぞれについて 診断や治療について勧告がされています。安静、固定、消炎鎮痛剤の積極的な使用や理学療法は治療の長期化につながると指摘しており、日本の現状にはそぐわない面があるようです。 国が違って事情が違えば治療方針までもが異なってしまうのでしょうか。医学会のあいまいさが垣間見えます。
頚椎捻挫の分類
分類方法は様々ですが、病型分類としては捻挫型、神経根症型、脊髄症型、バレーリュー型などに分けられます。 捻挫型は項部や僧帽筋の痛みを中心とした症状が現れます。 頚椎には7個の椎骨が連なっていますが、その中の脊髄から各隙間を通って神経根という神経の太い塊が伸びて、肩や上肢などの末梢神経へ伸びていっています。 何らかの原因でこの神経根が障害されるのが神経根症型です。各神経根はその支配領域が決まっている為、症状がでている部位からどの神経根が 障害されているか推測ができます。脊髄症型は椎骨に囲まれた脊髄が何らかの原因で障害されたものです。上肢だけでなく、体幹や下肢にも何らかの症状が出る場合があります。 バレーリュー症候群は、めまいや耳鳴りなど脳幹、自律神経症状を主訴とするものです。原因は様々な説があり、はっきりとわかっているわけではないようですが、 頚部の交感神経が亢進している為とか、椎骨動脈の循環障害のためなどと考えられているようです。
むち打ち症の問題点
事故で腕を骨折しますと、しばらくはギプスのお世話になる事が多いと思います。周りの人もギプスを見てどんな怪我なのか概ね察しがつきます。
むち打ち症の場合は、初期に頚椎カラーをはめる事はありますが、何週間、何ヶ月にもわたってその様な装具をつけるわけではありません。本人は色々な症状が強く残っているのに、
周りの人にはその辛さがわからない為、「まだ通院してるのか」「気のせいでは」などというように勘ぐられる事もしばしばのようです。
周りの人間にこのように思われるのも
辛い事ですが、保険会社にその様に見られる場合もあります。「鞭打ちは3ヶ月までしか治療できません」「骨折しているわけではないのですから、もう治療は止めてください」
これらは相談者が実際に担当者からいわれた言葉です。交通事故によるむち打ち症の場合は、損害賠償の話が絡むため、一般のけが人に比べ、心因的な要素が複雑に絡みやすい
ということは以前から言われています。加害者側の心無い態度がその元凶となっているのではないかと思えるようなケースが多々見受けられるのは、大変残念な事です。
見た目で痛いのかどうかわからないというのは、医学の世界でも関係があります。患者が自分で訴える症状の事を自覚症状というのに対し、客観的に捉えられる症状の事を
他覚的所見といいます。むち打ち症の場合は患者の自覚症状は色々あるのですが、他覚的所見が少ないのです。 他覚的所見がないからといって治療が必要ないという事ではありませんので
、いつまで治療を継続すべきかは医師と相談の上決めるべき事ですが、後遺症の診断の時に
他覚的所見がない場合は、後遺障害等級は非該当となりがちです。結果として1年通院しても痛みが治まらず、保険会社に後遺症の認定を勧められたが非該当だった、
という内容の相談が後を絶たないのです。
低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)
脳と脊髄は硬膜という膜に覆われています。そこには脊髄液が満たされ、脳と脊髄は、脊髄液の中に浮いています。何らかの原因で脊髄液が漏れ、圧力が下がると、 神経や血管が引っ張られて、頭痛やめまい、吐き気などの様々な症状が現れます。現在の医学界では、低髄液圧症候群については研究段階で、確定的な診断方法は確立されていないようです。 RI脳槽シンチによるクリスマスツリー型の髄液漏れ所見などによる診断は良く行なわれるようですが、治療後、その所見がなくなっていたとしても、必ずしも症状が改善されるものではないようです。
当サイト内の情報の利用は自己責任でお願いいたします。