治療費に関する判例

交通事故オンライン損害賠償編

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伊佐行政書士事務所

治療費の相当性や因果関係

【大腿骨の再骨折についての治療費】
原告は本件事故による傷害で、即時入院し、大腿骨骨折の接合手術を受けたが、骨折部分の癒合が遅く、昭和43年4月6日退院し、 引き続いて昭和43年4月10日から膝関節の拘縮治療のため病院に入院し、専ら膝関節の機械矯正、機能訓練を受ける事となった。 ところが入院後二ヶ月を経過した頃同病院の機能訓練助手による右足膝関節の屈伸訓練中、骨折部がグッという音を発し、 原告はその後骨折部に疼痛と軽度の腫脹を覚えるようになり、以後の機能訓練を中止し、レントゲン検査をした結果、骨折部の 癒合が不完全で接合部が離解していると判定され、数日後の昭和43年6月11日、医学部付属病院に転医し、同13日、 再度交通事故による骨折部の接合手術を受け、同月24日同病院を退院し、同日から更に前記病院で膝関節部の拘縮治療を 受けたが、容易に軽癒する見込みがなく、昭和43年10月31日右関節の屈曲わずか150度程度のまま同病院を退院し、 ・・・そのことから直ちに同病院に療法上の処置につき過失があったと認めがたいばかりでなく、仮に過失があったとしても被告が 原告に負わせた骨折と別個部位の医療上の過失による骨折とは到底認められないから、その後原告が要した治療費、後遺症等 につき、被告が免責される事由となるものではない。(福岡地裁昭和45年6月10日)

【生活保護による医療扶助】
破産者が前示入通院に要した費用が合計金74万3733円であることは証拠によってこれを認めることができ、そのうち金46万2540円 を被告が支払ったことは原告の自認するところである。その余の残額金28万1193円については、破産者が医療扶助をうけ全額名古屋市に おいて支払済みであることは当事者間に争いがない。原告は、右医療扶助を受けた分は返還の義務があるので本件事故による損害として 請求し得べきものであると主張する。・・・これを交通事故によって生じた傷害の治療のため医療扶助が行なわれた場合について見ると、 被保護者自体には資力がない場合でも、当該治療費を損害賠償として加害者側に請求することができるときには、 保護の補足性という原則に照らし、当該債権を行使しその賠償を受けることができるところに一種の資力があるものとして、「資力があるにも 拘らず医療扶助を受けた」場合に該当し、同法第63条所定の金額を返還すべき義務があると解するのが相当である。(名古屋地裁昭和45年12月23日)

【歯の補綴に高価な材料を使用した場合の治療費】
A歯科医院で再治療を受けたこと、その内容は右の架工義歯の撤去のうえ、病変部分を治療し、改めて義歯を補綴し、 左犬歯にポーセレンジャケットクラウンを、右犬歯および右第一大臼歯に前装白金加金全部鋳造冠を、歯牙欠如となっていた左右中切歯、 側切歯、右第一、第二小臼歯に金属床陶歯を、それぞれ使用して装着したこと、なお歯頸部適合を良好にさせるため全部鋳造冠を 作成したものであること、前記国立大阪病院における架工義歯装着の治療費用は、架工義歯に銀合金高融製を使用し、その支台にサンプラチナ製 を使用して総額が金10263円であり、これが厚生省の定める歯科診療報酬点数表所定の金額であること、A歯科医院での治療についても 、右点数表所定の方法で治療すれば、その金額は15450円程度であることが認められる。さて、一般に、患者がその希望する所で、 希望する方法により診療を受けることは当該本人の自由であり、このことは交通事故による被害者の場合も例外ではない。 ・・・おのずから社会的に許容しうる相当な方法と材料による金額に限定され、なお患者自身において右相当額を超える方法と材料に より治療を受けたいならば、その差額は、当該本人の負担となるものと解するのを相当とする。(大阪地裁昭和46年2月26日)

【マッサージ、按摩、電気治療器具の費用】
証拠によれば、原告の請求原因のとおり、金員を支出したことが認められるのであるが、同じく、右証拠によれば、 これらマッサージやアンマ等は、いずれも後期で認定の病院への通院期間中にこれら病院での通院治療と併行して なされたものであることが認められ、この認定を妨げる証拠はない。このように、医師による治療を受けている期間内において、 これと重複して別途マッサージ、アンマ等を行い、また自宅で電気治療器を使用した場合等には、医師が必要と認めて、 その指示ないしは承諾のもとに行なったものであるときにはじめてその支出を事故と相当因果関係のある損害として 評価しうるものと解すべきである。(岡山地裁昭和48年11月15日)

【医師に対する謝礼】
証拠によれば医師に対する謝礼として6310円を支出した事が認められる。被告らは医師に対する謝礼は本件事故と 因果関係を欠き失当である旨主張するが、入院患者を世話になった医師に対し謝意を表し金品を送ることは通常おこなわれる 儀礼的風習であり、それが患者の症状等に照らし不相当なものでない限り入院の原因たる事故により生じた損害とみるべく本件に おける謝礼は相当なものと認められる。(京都地裁昭和46年6月21日)

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